新型コロナウイルス禍の2021年6月、産業競争力強化法により、上場企業に限り、一定の要件を満たし、経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けた場合に限り、バーチャルオンリー(開催場所のない)株主総会の開催が可能となりました。しかし非上場企業では、一部バーチャルを利用したハイブリッド型株主総会はできるものの、完全バーチャル型株主総会は開催することができません。
これは、主に会社法298条1項1号により、株主総会の場所を定めなければならないとされているからです。
もともと会社法以前の法律(旧商法)では、株主総会の場所については、「定款に別段のさだめがある場合を除き、本店の所在地またはこれに隣接する地にこれを招集しなければならない」と規定されていました。
これは株主が出席困難な遠隔地で株主総会が開催されることを防ぐ目的がありました。さすがにこれでは硬直的すぎるとして、会社法では、この招集地の制限規定はなくなりました。
しかし、今でも定款に定めがある場合及び欠席の株主全員が同意しない限り、株主総会の場所が過去に開催された場所とも著しく離れた場所である場合には、その場所に決定した理由を明らかにしなければなりません(会社法規則第63条2項)。このように、株主総会の場所は非常に重要な意味をもっていました。
ところが新型コロナウイルス禍において、政府は国民に行動制限をかけました。
不要不急の外出も制限され、重要であるはずの裁判所すら裁判が延期になる事態となりました。そのため株主総会においてバーチャル(オンライン)の導入が必要不可欠となり、これまでの株主総会における開催場所の重要性を直ちに無視することはできず、バーチャルオンリ-株主総会の開催は極めて限られた企業のみしかできない法律となりました。
しかし、この法改正について一部の海外投資家からは質問や動議などの株主権利を損なう恐れがあるとして反対意見が出されました。確かに、オンラインによる株主総会の運営については技術上の問題や運営方法の問題など課題が沢山あります。
また、未だ日本においてはオンラインの利用自体に馴染みのない方や、環境や技術上オンラインが難しい方もいらっしゃいます。
しかし、これらの課題を克服さえすれば、バーチャルオンリー株主総会は、遠隔地の株牛も平等に参加し、質疑や応答にも対応でき、また開催コストの削減にも寄与することから、活用が期待できるものです。いずれ非上場の株式会社にもバーチャルオンリー株主総会の実施が可能となる時がくるものと期待致します。
(担当 山田勝彦)