「事業性融資の推進等に関する法律」とは何か
2024年6月7日に「事業性融資の推進等に関する法律」が成立しました。成立後2年6か月の間に施行されることになります。
この法律は、企業に対する金融機関の融資の担保の在り方・仕組みを変えていこうという法律です。
これまで金融機関の融資を受ける際の担保は、主に企業が所有する不動産等の有形資産と事業主の個人保証が中心となっていました。しかし過度な事業主の個人保証は、事業承継を妨げる要因となったりすることなどの弊害があり、また企業も、必ずしも不動産等の有形資本を所有しない場合もあることから新たな担保の制度が必要との議論がなされてきたことから生まれた法律です。
新たな担保として制度化されるのは、「企業価値担保権」というものです。この企業価値担保は、事業の実態や将来性に着目し、無形資産も含めた事業全体を担保とする制度です。企業価値担保権を設定していることは商業登記簿に記載され、万一の場合には優先的に弁済を受けられる仕組みにしています。
誤解をおそれずにいえば、これまで企業の価値全体を見て出資をしてきたファンドの融資版と考えると理解しやすいかと思います。出資のファンドの場合、企業価値を高めることを重視し、経営等にいわば口出しをすることが多いと思います。
そしてこの企業価値担保権も、企業価値そのものを担保とするため、金融機関は融資期間中も継続的に時魚実体の把握のためのモニタリングを行い、場合によってはファンド同様、経営に口出しをし、企業価値を低めないような都力むが行われることが容易に予想されます。
これまでの有形資産の担保や人的担保による融資の場合には、最後はその有形資産を金銭化したり、個人の支払いを求めれば済むので、経営について強く口出しはしてこなかった金融機関も企業価値担保権の場合には、担保権者の権利として経営に口だしをすることが可能となってきます。
確かに不動産などの有形資産がないベンチャー企業等にとって新たな融資方法は魅力があるかもしれませんが、これまで以上に企業経営に対して金融機関からの干渉を受ける可能性がある制度であることも考える必要があります。
人を大切にする経営では、自己資本率を大切にします。それは経営者の思い、経営理念をもって会社に関わる全ての人を大切にする考えを守るためには、資本をできるだけ他に依存しないことが必要だからです。これからも様々な制度ができてくるかも知れませんが、大切な原理原則は不変だと思います。
(弁護士 山田勝彦)